見習いのころ、はじめてひとりで港に船を着けた日があった。
岸壁にぴたりと寄せられた瞬間、ほっとして、ひざの力がぬけた。じゃが、だれも何も言わん。着いてあたりまえ、という顔じゃ。
すると、年かさの甲板長が、帆柱に小さな旗を一本かかげてくれた。「今日はおまえの旗じゃ」。
その晩の夕飯の味は、今でもよう覚えておる。
あとで聞いたら、あの船では、だれかが初めて何かをやりとげた日に、旗を立てる決まりがあったそうじゃ。大きな手柄でなくてよい。初めての一回を、みんなで喜ぶための旗じゃった。
きみにも、今週「できた」ことがあったじゃろう。はじめて自分で調べて答えにたどり着いた。聞かれたことに、落ち着いて返せた。
それは、ちゃんと祝ってよいことじゃ。帰りに好きなものを買うてもよい。だれかに話してもよい。

みなとくんぼく、今日はじめて、ひとりで最後まで確認できたんです! 旗、立ててもいいですか!

あんぼう船長もちろんじゃ。いちばん高いところに立てるがよい。次の旗も、楽しみにしておるぞ。
