概要
輸出管理の違反の原因は、会社の形によって、つまずく場所が違います。
経済産業省の違反事案の分析結果を3年分並べると、次の傾向が3年続けて出ていました。
- CPを届け出ていない会社・資本金の小さい会社は、「管理体制」でつまずく割合が高い
- CPを届け出ている会社・資本金の大きい会社は、「該非判定」でつまずく割合が高い
体制がある会社は判定の中身で、体制が薄い会社はその手前で。そう読める数字です。
あなたの会社は、どちらのつまずき方に近いでしょうか?


- 違反原因の10項目が、3年でどう動いたか
- CP届出の有無・資本金・従業員数で分けると、原因の内訳がどう違うか
- 自社の形に合わせて、先に固めるべき場所
まず全体:10の原因を3年並べる

経済産業省は、違反の原因を5つの大分類と、その下の約10項目に分けています。2022年度→2023年度→2024年度の順に並べます(年度によって、項目名が少し違うものがあります)。
管理体制
- 輸出管理体制の不備・形骸化:12% → 3% → 8%
- 外為法の認識不足・知識不足:8% → 9% → 9%
- 管理ルール・体制未整備:8% → 9% → 19%
該非判定
- 判定未実施・非規制思い込み:32% → 21% → 32%
- 他者の誤判定の鵜呑み:16% → 18% → 5%
- 判定誤り・法令解釈誤り:16% → 30% → 15%
取引審査・出荷管理・故意
- 許可不要特例適用誤り:2% →(項目なし)→ 9%
- 許可証適用誤り:(項目なし)→ 3% → 1%
- 出荷・申告時の誤り:4% → 3% → 0%
- 故意:2% → 3% → 2%
該非判定は3年とも最大の分類です(64%・70%・52%)。ただ、中身は年によって入れ替わっています。2023年度は「判定誤り」、2022年度と2024年度は「判定未実施・思い込み」が最大でした。
※2023年度の該非判定は、経済産業省の資料の本文では70%、内訳3項目の合計は69%です(四捨五入の差)。
CP届出の有無で分けると

ここからが本題です。経済産業省は、原因の内訳を会社のグループごとにも公表しています。
CP=「輸出管理の社内ルールブック」です。正式には輸出管理内部規程といい、経済産業省への届出は任意です。
CPを届け出ている会社(CP届出企業)と、届け出ていない会社(それ以外)で、「管理体制」と「該非判定」の割合を比べます。
管理体制の割合
- CP届出企業:22% → 9% → 26%
- それ以外:30% → 27% → 39%
該非判定の割合
- CP届出企業:64% → 82% → 61%
- それ以外:64% → 63% → 49%
3年とも、CPを届け出ていない会社のほうが「管理体制」の割合が高くなっています。反対に「該非判定」の割合は、CP届出企業のほうが同じか高い年ばかりです。
資本金・従業員数で分けると

同じ比べ方を、資本金でも行います。
管理体制の割合
- 資本金3億円超:22% → 6% → 29%
- 資本金3億円以下:31% → 40% → 39%
該非判定の割合
- 資本金3億円超:67% → 82% → 61%
- 資本金3億円以下:63% → 53% → 47%
こちらも3年とも同じ向きです。資本金の小さい会社は管理体制の割合が高く、大きい会社は該非判定の割合が高くなっています。
従業員数では、3つのグループに分かれています。管理体制の割合を並べます。
- 300人超:30% → 13% → 35%
- 21〜300人:23% → 17% → 32%
- 20人以下:31% → 60% → 41%
20人以下の会社は、3年とも3つのグループの中で「管理体制」の割合がいちばん高くなっています。2023年度は60%で、該非判定(40%)を上回りました。
この数字をどう読むか
数字を見るうえで、2つ注意があります。
① 件数は公表されていません
経済産業省の資料には「件数(実数)は非公表」と書かれています。割合は、それぞれのグループの中での内訳です。「どのグループで違反が多いか」を比べた数字ではありません。
② 1年だけでは偶然の場合があります
たとえば2023年度の「20人以下で管理体制60%」は、ほかの年より大きく跳ねています。だから今回は、3年続けて同じ向きに出た差だけを取り上げました。
そのうえで、次のように読むことができます。
体制がある会社
→ 手順は回っている
→ つまずくのは「判定の中身」(判定誤り・思い込み・他社の判定書)
体制が薄い会社
→ 手順そのものがない・知られていない
→ つまずくのは「その手前」(ルール未整備・知識不足)
たとえるなら、地図を持っている人は道の読み違いで迷い、地図を持っていない人はそもそも道を知らずに迷う、という違いです。
自社の形で、先に固める場所が違います

数字の読み方が合っているとすれば、対策の順番も変わってきます。
CPを届け出ている会社・規模の大きい会社なら
- 該非判定の中身の点検を先に行う
- 例:複数の項番を確認しているか、法令改正のたびに判定を見直しているか、他社の判定書を自社で確かめているか
CPを届け出ていない会社・規模の小さい会社なら
- 手順を書き出すことを先に行う
- 例:誰が判定し、誰が承認するか。どの書類に残すか。法令改正を誰が見るか
どちらの会社でも、該非判定は3年とも最大の原因です。判定の点検は、どの会社にとっても欠かせない土台です。
まとめ
- 違反原因の最大は、3年とも該非判定(64%・70%・52%)。ただし中身は年ごとに入れ替わる
- CPを届け出ていない会社は、3年とも管理体制の割合が高い(30%・27%・39%)
- 資本金3億円以下の会社も、3年とも管理体制の割合が高い(31%・40%・39%)
- 20人以下の会社は、3年とも3つの従業員グループの中で管理体制の割合がいちばん高い
- 割合はグループ内の内訳。件数は非公表なので、違反の多さの比較ではない
さて、あなたの会社は「地図を持って迷う」側でしょうか。それとも「地図をまだ持っていない」側でしょうか?


※ 数値は、経済産業省「外為法違反事案の分析結果について(安全保障貿易関係)」2022年度版(2024年1月公表)・2023年度版(2024年12月公表)・2024年度版(2025年12月公表)の「違反原因分類別割合」とその比較(CP届出の有無・資本金別・従業員数別)によります。割合は主要因を集計したもので、事案によっては付随する要因があります。四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。件数(実数)は公表されていません。
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