概要
該非判定の記録は、「判定した証拠」のためだけに残すものではありません。いちばん働くのは、法令が改正された日です。
規制のリストは、原則として毎年改正されます。そのたびに、全部の品目を一から判定し直すのは大変です。
記録に「いつの法令で、どの項番を見て、どう判断したか」が残っていれば、見直す品目だけを拾い出せます。
あなたの会社の記録から、「去年の改正で見直した品目」をすぐに出せるでしょうか?
この記事では、安貿ナビが作った1品目1枚の記録の見本をお見せします。あわせて、各項目をなぜ残すのか、改正のときにどう使うのかを、経済産業省の資料にそってお話しします。


- 該非判定の記録が、改正のときにどう働くのか
- 1品目1枚の記録の見本と、8つの項目それぞれを残す理由
- 改正のときに、記録から見直す品目を絞り込む手順
記録は「改正の日」に働きます

該非判定=「その貨物や技術が、規制のリストに載っているかを確かめる作業」です。
経済産業省のガイダンス(入門編)は、次のように書いています。
一度判定したものは、規制の法令が改正されない限り、原則として判定し直さなくてよい。 判定結果や根拠は一覧表にまとめて管理するとよい(法令が改正されたら見直しが必要)。
裏返すと、記録には2つの役目があります。
- ふだん:同じ品目の2回目からは、記録を引いて確かめる
- 改正のとき:記録から、見直しが必要な品目を拾い出す
2つ目の役目は、記録に「いつの法令で判定したか」が書かれていないと果たせません。
経済産業省の立入検査でも、最新の資料で判定していなかった例が指摘されています。指摘の内容は「最新の法令で判定し、その証跡を残すこと」「法令改正のときは判定内容を確認すること」でした。
2024年度の違反原因を見ると、該非判定に関わるものが52%でした。経済産業省が公表した事例には、過去に「非該当」と判定した製品が改正で規制の対象になったのに気づかず、無許可の輸出を繰り返した例もあります。記録は、この見落としを防ぐ道具にもなります。
1品目1枚の記録の見本

安貿ナビが作った見本です。品目・型番は架空のもので、項番と数値は〇で伏せています。
【該非判定の記録】記録番号 G-0123(安貿ナビの見本)
① 品目・型番 :小型ポンプ AB-100
② 判定日・法令の版:2026年4月10日
2026年2月14日施行の版で判定
③ 項番と結果 :貨物=非該当/技術=非該当
検討した項番:〇の項(〇)、〇の項(〇)
理由:〇〇が基準の値に届かない
④ 根拠の仕様値:流量〇〇、材質〇〇
出所:メーカー仕様書 第3版 5ページ
⑤ 判定者・承認者:技術部 A/輸出管理責任者 B
⑥ メーカー判定書:あり(判定日・法令の版を確認)
型番の一致・理由の妥当性を確認済み
⑦ 再判定のきっかけ:法令の改正/型番・仕様の変更
/部品・仕入先の変更
⑧ 見直しの履歴:2027年〇月 改正を確認
結果変わらず(確認者 A)
判定書そのものの書き方は、別の記事で「7つの層」として整理しました。この記事では、品目ごとに、改正のときに引ける形で残すことに絞ります。
8つの項目を残す理由

見本の8項目は、どれも経済産業省の資料にある確認点から逆算しています。
- ① 品目・型番:型番まで書きます。出荷のときに「判定したものと同じか」を確かめる手がかりになります(輸出者等遵守基準)
- ② 判定日・法令の版:改正のとき、見直しが要るかを決める物差しです。いちばん大事な欄です
- ③ 項番と結果:該当した項番だけでなく、検討して当たらなかった項番も書きます。1つの貨物が複数の項目で規制されることがあるためです
- ④ 根拠の仕様値:数値と、その数値をどの資料で見たかを書きます。ガイダンスは、責任者が判定の根拠資料をもとに確認して決裁するとしています
- ⑤ 判定者・承認者:2人以上が関わった形を残します。説明会資料も、判定はダブルチェックで行うとしています
- ⑥ メーカー判定書:使ったなら、何を確かめたかを書きます。ガイダンスは、型番の一致・理由の妥当性・最新の法令かを確かめるよう求めています
- ⑦ 再判定のきっかけ:どんなときに判定し直すかを、先に決めて書いておきます
- ⑧ 見直しの履歴:前の記録を消さずに、下へ書き足します
項番=「規制リストの中で、その品目が載っている場所の番号」です。
とくに③の「当たらなかった項番」は見落とされがちです。非該当の品目は、その後に許可の手続きがありません。記録がなければ、改正で関係するかどうかを確かめる手がかりが残らないのです。
改正のときの使い方

改正が公布されたら、記録を次の順に使います。
① 改正で変わった項番を確かめる
↓
② 記録の「③ 検討した項番」で、その項番を探す
↓
③ 見つかった品目の「② 法令の版」が、改正前のものかを見る
↓
④ 施行日までに、その品目を判定し直す
↓
⑤ 結果を「⑧ 見直しの履歴」に書き足す
公布=「新しい法令が世の中に知らされること」、施行=「その法令が実際に効き始めること」です。この間に見直しを終えるのが目安です。
ただし、記録で拾えるのは「前に検討した項番」に関係する品目だけです。改正で新しい項目が加わったときは、これまで検討していない項番が関係することもあります。新しい項目が加わった改正では、扱う品目がその項目に当たらないかも、あらためて確かめます。記録に項番が残っていない品目も同じです。
⑦に「部品・仕入先の変更」を書いておくのも同じ理由です。改正以外のきっかけも、記録の側で拾えるようにしておきます。
残し方と保存期間

最後に、残し方です。
- 1品目ごとに1か所へまとめます。記録・判定書・仕様書・メーカー判定書を、同じ記録番号でつなぎます
- 上書きしません。 見直したら、履歴に書き足します。前の判断が、いつの法令によるものかが分かるようにするためです
- 取引の記録とは分けます。 相手や使いみちを確かめた記録(取引審査の記録)は、取引ごとに残します。該非判定は品目ごと、取引審査は取引ごと。単位が違うので、分けたほうが引きやすくなります
保存期間について、ガイダンスは次を目安に示しています(貨物の輸出・技術の提供の日から数えます)。
- 武器・大量破壊兵器等に関わるもの(1〜4の項):少なくとも7年
- 通常兵器に関わるもの等(5〜16の項):少なくとも5年
規制に当たる貨物・技術を扱う会社には、輸出に関わる文書を適切な期間保存するよう努めることが求められています。ガイダンスは、違反が分かったときや監査のときに、輸出管理をきちんと行っていたことを示すためだと説明しています。
まとめ
- 該非判定の記録がいちばん働くのは、法令が改正された日
- 見本の8項目:品目・型番/判定日・法令の版/項番と結果/根拠の仕様値/判定者・承認者/メーカー判定書/再判定のきっかけ/見直しの履歴
- 「法令の版」と「検討した項番」があれば、改正のときに見直す品目を絞り込める
- 記録は1品目ごとに1か所へ。上書きせず、履歴に書き足す
- 取引審査の記録とは単位が違うので、分けて残す
あなたの会社の記録には、「法令の版」の欄があるでしょうか? 次の改正の前に、1品目だけでも見本の形に書き直してみてください。


※ 再判定の考え方・判定の注意点・保存期間の目安は、経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]」(第3.0版・令和8年3月)によります。輸出者等遵守基準は、外国為替及び外国貿易法第55条の10および輸出者等遵守基準を定める省令(平成21年経済産業省令第60号)によります。ダブルチェックと立入検査の指摘事項は、経済産業省の説明会資料「安全保障貿易管理の実務(中級編パート2)」(令和7年度)、違反原因の割合と事例は同「外為法違反事案の分析結果」2024年度版によります。記録の見本は、これらをもとに安貿ナビが実務向けに整理した独自のもので、法令上の様式ではありません。該非判定書は、経済産業省が公表している参考様式もあわせてご確認ください。個別の品目が規制に当たるかは、法令・通達の原文をご確認のうえ、必要に応じて経済産業省にご相談ください。
改正を見落とさないために(無料)
安全保障貿易の制度は、たびたび改正されます。安貿ナビでは、経済産業省・CISTEC・米国EARの新着を確認し、実務への影響をメールでお届けしています。
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