概要
海外の展示会に持っていく製品・サンプル・パソコンは、手荷物でも、持ち帰る予定でも「輸出」です。 現地での技術の説明も、「技術の提供」にあたることがあります。
展示会の準備は、ブースの設営、配る資料、出張の手配と、やることが山ほどあります。その中で、輸出管理の確認があと回しになっていませんか?
この記事では、出発前に確かめたいことを10項目のリストにまとめました。1つずつ、意味と根拠をお話しします。


- 展示会への持ち出しが「輸出」になる理由と、特例の使える範囲
- パソコンの中身と、ブースでの説明を「技術」として見るときのポイント
- 現地で売る・置いてくる・持ち帰るときに確かめること
出発前の確認リスト(10項目)

まず、リストの全体です。
【出発の前】
□ ① 持ち出す物をすべて書き出した
(製品・サンプル・デモ機・パソコン・USBメモリ・資料)
□ ② 1つずつ該非判定をした
(展示用に仕様を変えた物・試作品は判定し直す)
□ ③ 行き先の国・展示会の主催者・会場を確かめた
□ ④ 規制に当たる物は、出発前に許可を取った
□ ⑤ 特例を使うなら、条件に当てはまることを確かめた
□ ⑥ パソコン・USBメモリの中の技術資料を確かめた
□ ⑦ 現地で話す内容と、配る資料の線を引いた
□ ⑧ 現地で売る・置いてくる可能性を、先に確かめた
【帰ってきたら】
□ ⑨ 持ち帰った物を、持ち出した物と突き合わせた
□ ⑩ 判定・許可・持ち帰りの記録を残した
該非判定=「その貨物や技術が、規制のリストに載っているかを確かめる作業」です。
ここからは、このリストを4つに分けて説明します。
手荷物でも、持ち帰る予定でも輸出です(①〜④)

経済産業省のガイダンスは、貨物の輸出の例として、海外出張者のハンドキャリーと海外展示会のための一時的な持ち出しをはっきり挙げています。
ハンドキャリー=「貨物を自分の手荷物として運ぶこと」です。
売らなくても、持ち帰る予定でも、国の外へ出れば輸出です。ですから、確認は持ち出す物をすべて書き出すところから始めます(①)。展示の直前に仕様を変えたデモ機や、試作品も忘れずに入れます。前に判定した製品と同じとは限らないからです(②)。
規制に当たる物は、出発の前に許可を取ります(④)。手荷物で運ぶ場合も同じです。経済産業省のQ&Aにも、出国のときに申請者が自分で貨物を持ち込み、その場で通関の申告をする場面が出てきます。
特例は「使える範囲」を条文で確かめます(⑤)

特例=「条件を満たせば、許可を取らずに輸出できる決まり」です。展示会の持ち出しで名前が挙がりやすいのは、次の2つです。
- 少額特例:対象は、輸出令別表第一の5〜13項と15項の貨物です。総価額は100万円以下(告示で定める貨物と15項の貨物は5万円以下)で、行き先がイラン・イラク・北朝鮮以外であることが条件です。展示品のように売買の契約がない物は、税関の鑑定価格で見ます。特例を使うことは、通関のときに税関へ申告します
- 一時的に出国する人の携帯品:暗号機能をもつパソコンなど(9項・12項の貨物)で、本人が使うと認められるものは、許可が要りません
どちらにも外れる場面があります。少額特例は、1〜4項の貨物には使えません。用途などに懸念があって補完的輸出規制に当たる場合も、使えません。ブースに置いておくデモ機が「本人が使うもの」と言えるか迷うときは、特例に頼らず判定し、経済産業省に相談します。
もうひとつ、まちがえやすい点があります。無償特例の中で「展示会」や「ATAカルネ」が出てくる項目は、どちらも外国から日本に入ってきた貨物を送り返すときのものです。日本から海外の展示会へ出して持ち帰る貨物を、広く対象にする項目ではありません。
ATAカルネ=「展示品などを一時的に持ち込むための、国際的な通関手帳」です。通関の手続きを簡単にするもので、輸出許可の代わりにはなりません。
パソコンの中身と、ブースでの説明は「技術」です(⑥⑦)

パソコン本体が特例で出せても、それで終わりではありません。中に入っている設計図や製造の資料は、「技術」として別に確かめます(⑥)。ガイダンスは、記録媒体をハンドキャリーで持ち出すことも、技術の提供の方法として挙げています。
現地での説明にも目を向けます(⑦)。外国で技術を渡すことは、相手がだれでも、技術の提供にあたりえます。
一方で、公知の技術は許可が要りません。
公知の技術=「すでに、だれでも手に入れられる状態になっている技術」です。
展示会で不特定多数の人が手に取れるカタログや、だれでも聞ける講演は、この例外の範囲です。気をつけたいのは、個別の商談です。ブースの奥で、特定のお客さまに、まだ公開していない資料を見せる。これは「だれでも手に入れられる」とは言えません。出発前に、「ここまでは話してよい」という線を引いておきます。
売る・置いてくる・持ち帰る(⑧〜⑩)

展示会では、「その展示品を売ってほしい」と言われることがあります。
持ち帰る前提で許可を取った貨物には、持ち帰ったら報告する、売る前に経済産業省の同意を得るといった条件が付くことがあります。その場で売る約束をせず、まず許可証の条件を確かめます。売る・現地の会社に置いてくる可能性があるなら、出発前に、それを前提にして確認するのが安全です(⑧)。
帰ってきたら、持ち帰った物を、持ち出した物と品名・型番・数で突き合わせます(⑨)。足りない物があれば、どこへ行ったのかを確かめます。
最後は記録です(⑩)。ガイダンスは、規制に当たる貨物を扱う会社に、輸出の書類を少なくとも5年(武器や大量破壊兵器に関わるものは7年)残すよう求めています(努力義務)。判定の結果、許可証、特例を使った理由、持ち帰りの突き合わせを、1つの案件としてまとめておくと、次の展示会でそのまま使えます。
まとめ
- 展示会への持ち出しは、手荷物でも、持ち帰る予定でも輸出
- 持ち出す物をすべて書き出し、1つずつ判定する。仕様を変えた物は判定し直す
- 特例は使える範囲を条文で確かめる。「展示会」と書かれた無償特例は、向きが逆
- パソコンの中身と個別の商談は、技術として確かめる
- 売る・置いてくる・持ち帰るときも、許可の条件と記録を確かめる
次の展示会で持っていく物を、いま全部書き出せますか? 書き出せない物があれば、そこが確認の出発点です。


※ 貨物の輸出・技術の提供の例と文書保存の目安は、経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]」(第3.0版・令和8年3月)によります。少額特例・無償特例・公知の技術の例外は、輸出貿易管理令第4条、無償告示、貿易関係貿易外取引等に関する省令第9条第2項と、経済産業省「輸出許可・役務取引許可の特例について」(2026年4月20日更新)によります。判断の基準となる金額、パソコンの持ち出し、許可に付く条件は、経済産業省「安全保障貿易管理Q&A」(2026年4月24日版)によります。確認リストの10項目は、これらの一次情報をもとに安貿ナビが実務向けに整理したもので、法令上の様式ではありません。個別の品物や取引が規制に当たるかは、法令・通達の原文をご確認のうえ、必要に応じて経済産業省にご相談ください。
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