概要
引き合いが来たら、商談を進める前に「品物・相手・使いみち・取引の条件」の4つを1枚で確かめます。
見積りを出してから「実は使いみちが分からない」と気づく。そんな経験はありませんか?
輸出管理の確認は、出荷の直前にまとめてするものだと思われがちです。けれども、いちばん確かめやすいのは最初の問い合わせのときです。まだ何も約束していないので、聞きにくいことも聞きやすいからです。
この記事では、引き合いの段階で使える確認シートを1枚お渡しします。そのまま自社の用紙にしていただけるように作りました。


- なぜ「引き合いの段階」で確かめるのがよいのか
- 1枚の確認シートと、各項目の意味と根拠
- 答えが返ってこないときの考え方と、シートの結果の振り分け方
確かめるのは「商談を進める前」です

経済産業省の通達は、補完的輸出規制の確認について、こう書いています。確認の結果に疑問があるときは、商談を進める前に疑問点の解決に努めること。
補完的輸出規制=「リストに載っていない品物でも、使いみちや相手によっては許可が要る仕組み」です。
同じ通達は、確認に使う情報を「ふつうの商慣習の範囲で、取引相手などから入手した文書やその他の情報」としています。探偵のような調査を求めているわけではありません。ふだんの商談で聞くことを、きちんと聞いて記録すればよいのです。
もうひとつ、大事な一文があります。入手した情報のうち、自分にとって都合の悪いものに目隠しをしないこと。
受注したい気持ちが強いほど、気になる点から目をそらしたくなります。だからこそ、聞くことを先に紙に書いておくのです。紙に書いてあれば、担当者の気持ちに左右されずに同じことを聞けます。
では、引き合いを最初に受けるのはだれでしょうか。
ガイダンスでは、用途や相手の情報を集めるのは輸出を担当する部門(製品の販売なら営業部門が多い)とされています。確認シートは、営業担当が最初の問い合わせで使う用紙として考えるのが自然です。
引き合い確認シート(1枚)

下のシートは、そのまま写して使っていただけます。社名や部署名、項目の言い回しは、自社に合わせて変えてください。
【引き合い確認シート】 受付日: 年 月 日 受付者:
案件名・見積番号:
A 品物(何を出すか)
□ 品名・型番が分かる
□ 仕様書・カタログがある(判定済みなら、その管理番号)
□ 技術資料・ソフトウェア・技術指導も渡すかどうか分かる
□ 標準品のままである(特注・仕様変更・改造の依頼はない)
B 相手(だれに渡るか)
□ 見積りの相手と、最終的に使う会社の名前・所在地が分かる
□ 最終的に使う会社の事業内容を、ホームページ等で確かめた
□ 外国ユーザーリスト(最新版)に載っていないか確かめた
□ 間に入る会社(代理店・商社・海外子会社)がどこまで続くか分かる
C 使いみち(何に使うか)
□ 使いみちの説明がある(何に使うか・何に組み込むか)
□ 使いみちが、相手の事業内容や規模に合っている
□ 設置・使用する場所が分かる
□ 注文の数量が、使いみちや規模に比べて多すぎない
D 取引の条件(ふだんと違う点はないか)
□ 行き先・輸送ルートに不自然な点がない
□ 支払いの条件が、不自然なほど有利ではない
□ 据付・保証・技術指導など、ふつう求められるものを断っていない
□ 行き先や使いみちについて、過度な秘密を求められていない
□ 質問に、はっきりした答えが返ってきている
E 次の手続き
□ すべて確かめられた → 該非判定・取引審査へ(ふつうの流れ)
□ 分からない・気になる項目がある → 商談を進める前に相手に確かめる/輸出管理担当へ相談
□ 確かめても解消しない → 取引審査で慎重に判断(必要なら経済産業省に相談)
記入者: 確認者(輸出管理担当):
※ 安貿ナビの独自の整理です。法令上の様式ではありません。
ここからは、ブロックごとに意味と根拠を見ていきます。
A 品物:判定の対象を決める
ガイダンスは、引き合いを受けた装置なら、装置そのものと、内蔵のプログラムや仕様書が判定の対象になると説明しています。
該非判定=「その貨物や技術が、規制のリストに載っているかを確かめる作業」です。
品物だけでなく、技術資料やソフトウェアを一緒に渡すかを最初に聞いておくのはこのためです。
「標準品のままか」も大事な項目です。いつもの品物でも、仕様を変えれば別の品物として判定し直す必要があるかもしれないからです。
B 相手:だれの手に渡るか
ガイダンスは、相手の確認に外国ユーザーリストや、相手のホームページ等の会社情報を使うよう示しています。
外国ユーザーリスト=「取引に特に注意が要るとして、経済産業省が公表している海外の企業・組織の一覧」です。
見積りの相手と、最終的に使う会社が同じとは限りません。ガイダンスの審査のポイントにも、「契約は最終的に使う会社までつながっているか」があります。海外子会社などを通じた引き合いは、とくに慎重に確かめるよう書かれています。
C 使いみち:話がかみ合っているか
通達のガイドラインには、分かりやすい例があります。小さなパン屋が、高性能のレーザーを何台も注文する。品物の性能が、相手の仕事に合っていない例です。
見るのは「使いみちの説明があるか」だけではありません。その説明が、相手の事業や規模とかみ合っているかです。数量が多すぎないか、設置場所が分かるかも、同じ考え方です。
D 取引の条件:ふだんとの違い
通達のガイドラインには、輸送ルートの異常、不自然に有利な支払い条件、据付や専門家の派遣を求めないこと、過度な秘密保持の要求などが並んでいます。
どれも、ふだんの商談と比べて「何かが違う」というしるしです。一つあれば即アウト、という意味ではありません。立ち止まって確かめる合図です。
答えが返ってこないことも、答えのひとつです

聞いても、はっきり答えてもらえないことがあります。そのとき、空欄のまま進めてよいのでしょうか?
通達のガイドラインは、使いみちの情報を出したがらない場合は、明確な説明はないものと推定するとしています。設置場所や、一緒に使う設備の説明についても同じ考え方です。
つまり、「答えがない」ことそのものが、確かめるべきしるしになります。
ここで大切なのは、相手を疑ってかかることではありません。聞く理由を添えて、ていねいに聞き直すことです。
- 「行き先と使いみちは、日本の法令にもとづいて確かめる項目です」
- 「お答えいただければ、社内の確認を早く進められます」
ふつうの取引であれば、理由が分かれば答えてもらえることがほとんどです。それでも答えがないときは、その事実をシートに書き残します。
シートの結果で、次の手続きを振り分けます

シートは、取引をしてよいかを決める用紙ではありません。次にどの手続きへ回すかを決める、入口の仕分けの用紙です。
引き合いが来た
↓
確認シート(A〜D)に記入
↓
すべて確かめられた?
→ はい:該非判定・取引審査へ(ふつうの流れ)
↓ いいえ
商談を進める前に、相手に確かめる/輸出管理担当へ相談
↓
それでも解消しない?
→ はい:取引審査で慎重に判断(必要なら経済産業省に相談)
取引審査=「取引の相手と使いみちを確かめて、取引をするかどうかを決める手続き」です。
シートに書いた内容は、そのまま取引審査の材料になります。営業担当が聞き、輸出管理担当が判断する。 役割を分けると、営業は「何を聞けばよいか」で迷わず、輸出管理担当は聞き返しが減ります。
経済産業省のガイダンスには、用途チェックリストや需要者チェックリストなどの帳票の例も載っています。この記事のシートは、それらの手前で使う入口の1枚です。取引審査そのものは、ガイダンスの帳票例も参考に、自社の手順で行ってください。
あなたの会社では、最初の問い合わせを受けた人が、何を聞くか決まっているでしょうか?
まとめ
- 確かめるのは商談を進める前。聞きにくいことも、最初なら聞きやすい
- 確認に使うのは、ふつうの商談で手に入る情報。都合の悪い情報から目をそらさない
- シートは品物・相手・使いみち・取引の条件の4ブロック+次の手続き
- 答えが返ってこないことも、答えのひとつ。理由を添えて聞き直し、記録する
- シートは取引の可否を決める用紙ではなく、次の手続きへ回す入口の1枚


※ 「商談を進める前に疑問点の解決に努める」「通常の商慣習の範囲で入手した情報で確認する」「都合の悪い情報に目隠しをしない」「用途の情報を提供したがらない場合は明確な説明はないものと推定する」などは、経済産業省「大量破壊兵器等及び通常兵器に係る補完的輸出規制に関する輸出手続等について」(輸出注意事項2025第27号)の「輸出者等が『明らかなとき』を判断するためのガイドライン」によります。判定の対象の考え方・用途と需要者の確認・取引審査のポイント・帳票の例は、経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]」(第3.0版・令和8年3月)と別添4によります。確認シートの項目と並べ方は、これらをもとに安貿ナビが引き合いの段階向けに整理したもので、法令上の様式ではありません。個別の品物や取引が規制に当たるか、取引をしてよいかは、法令・通達の原文をご確認のうえ、必要に応じて経済産業省にご相談ください。
改正を見落とさないために(無料)
安全保障貿易の制度は、たびたび改正されます。安貿ナビでは、経済産業省・CISTEC・米国EARの新着を確認し、実務への影響をメールでお届けしています。
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