この記事で学べること
- 2026年10月6日に閣議決定された政令で、何が新しく禁止になるのか
- 「102品目」「化学物質9物質」「工作機械プログラム」が、それぞれ何を指すのか
- 自社の取扱品目を見直すとき、どこを確認すればいいか



産業基盤強化に資する物品:化学品・鉄鋼製品・銅・アルミニウム・光学機器など、HSコード単位で102品目を追加
化学・生物兵器関連物品:化学物質を9物質追加
役務取引:対象の工作機械を動かす数値制御(NC)プログラムの提供も許可制に
いつから:2026年10月16日(金)施行(政令は10月6日閣議決定、10月9日公布)
誰に影響するか:化学品・金属製品・精密機器・工作機械関連の製造業者で、ロシア向け取引がある事業者
そもそも何の発表か
今回の発表は、2026年10月2日の閣議了解を、具体的な政令・省令に落とし込んだものです。
10月2日の閣議了解では、次の4つの措置を講じることが決まりました。
- ロシア連邦の関係者への資産凍結等(9個人・33団体を追加)
- ロシア・ベラルーシ以外の国の特定団体への輸出等禁止(トルコ・UAEの4団体を追加)
- 特定の船舶への役務取引等の規制(35隻)
- ロシアの産業基盤強化に資する物品等の輸出等禁止(新設)
1〜3は資産凍結・第三国団体・船舶規制として、すでに外務省告示などで具体化されています(2026年10月2日適用分)。今回の10月6日の政令は、4番目の「産業基盤強化に資する物品」の中身を確定させたものです。10月9日に公布、10月16日に施行されます。
変更点①:産業基盤強化に資する物品に102品目を追加

ここが実務上、いちばん広く効いてくる変更です。
経済産業省の資料によれば、今回追加されたのは次のような品目です(カテゴリーの一例)。
- 土石類及び石灰(ドロマイト、天然石膏 等)
- 鉱石、スラグ及び灰(クロム鉱、モリブデン鉱 等)
- 鉱物性燃料及び鉱物油(ベンゾール、トルオール 等)
- 無機化学品(塩素、硫黄化合物 等)
- 染料・顔料・インキ類
- プラスチック及びその製品
- 鉄鋼製品、銅及びその製品、アルミニウム及びその製品
- 卑金属製の工具・各種製品
- 原子炉、ボイラー及び機械類の部分品
- 光学機器、測定機器、精密機器及び医療用機器並びにこれらの部分品
ポイントは、まったく新しいカテゴリーが作られたわけではないということです。 もともとロシア向けに規制されている「産業基盤強化に資する物品」という枠(輸出令別表第二の三)の中に、HSコード(関税率表番号)単位で品目が追加された形になります。
対象かどうかは、自社が取り扱う貨物のHSコードが、今回追加された番号に該当するかで確認します。経済産業省の公表資料には、追加された番号が赤字で示されています。
変更点②:化学物質が9物質追加された
「化学・生物兵器関連物品」の区分にも、新たに9種類の化学物質が追加されました。
- マロノニトリル、ニークロロベンズアルデヒド、ニークロロベンジルアルコール、ニークロロベンジルアミン、一ークロロ―二―(ジメトキシメチル)ベンゼン、アセトフェノン、クロロアセチルクロライド、クロロホルム、オルトーアミノフェノール
これらはCAS番号(化学物質の国際登録番号)でも特定されています。化学品を扱う事業者は、製品の化学物質名・CAS番号で該非を照合する必要があります。
変更点③:工作機械の数値制御プログラムも対象に
もう一つ見落としやすいのが、役務取引(技術やプログラムの提供)の変更です。
今回、特定の工作機械(関税率表第八四・五六項〜六五項に該当する貨物)の数値制御(NC)に用いられるプログラムの提供が、新たに許可が必要な取引に加わりました。
「モノ」だけでなく、機械を動かすためのプログラムの提供も規制対象になるという点に注意してください。
「原則禁止」だが、承認されうる例外もある
今回の規制対象品目をロシア向けに輸出することは、原則として承認されません。
ただし、経済産業省の資料では、次のようなケースに該当する場合は承認されることがあるとされています。
- 食品・医薬品
- 人道支援目的
- サイバーセキュリティの確保に関するもの
- 海洋の安全に関するもの
- 消費者向けの通信機器(政府機関・国有企業向けを除く)
- 民間向けの通信インフラ
- 政府間の輸出(非軍事分野の政府間協力等)
- 最終需要者が、日本や友好国の法人が出資した合弁法人等である場合
- 日本のエネルギー安全保障のため特に必要なもの
「原則禁止、例外的に承認されうる」という構造であり、「該当すれば自動的に輸出できる」わけではない点に注意してください。個別の該非判定・承認の要否は、自社の取引内容に沿って確認する必要があります。
実務で確認すべきこと
- 自社が取り扱う貨物のHSコードが、今回追加された番号(赤字表示分)に該当しないか
- 取り扱う化学品が、新たに追加された9物質(CAS番号)に該当しないか
- 工作機械関連の取引で、数値制御プログラムの提供を伴うものがないか
- ロシア向け取引がある場合、上記の例外事由に該当する可能性があるか(該当しても自動承認ではない点に注意)
対象品目の詳細な関税率表番号は、経済産業省の公表資料(貿易管理HP)に一覧で掲載されています。該非の最終確認は、公表資料の番号と自社製品のHSコードを突き合わせて行ってください。
まとめ
- 2026年10月16日施行(10月6日閣議決定、10月9日公布)
- 産業基盤強化物品:HSコード単位で102品目を追加(化学品・鉄鋼・金属製品・光学機器など)
- 化学物質:9物質を追加(CAS番号で特定)
- 役務取引:対象工作機械の数値制御プログラムの提供も許可制に
- ロシア向け輸出は原則不承認。ただし人道支援・サイバーセキュリティ等、承認されうる例外事由もある


※ 経済産業省「ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置を実施します(輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定されました)」(令和8年10月6日公表)および同省公表資料「外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令等の改正について」によります。対象品目の詳細な関税率表番号・化学物質の一覧は、経済産業省の公表資料でご確認ください。制度は今後も改正されることがあります。
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