概要
ソフトウェア(プログラム)を海外に渡すことも、輸出管理の対象です。 形のない「データ」でも、規制に該当する技術なら許可が要ることがあります。
「ソフトは物じゃないから、輸出管理とは関係ない」と思っていませんか?
経済産業省が公表している違反事例に、この思い込みから起きたものがあります。ソフトウェアの提供が外為法の規制対象になりうる、という認識がなかった事例です。
輸出管理というと、コンテナや通関を思い浮かべる方が多いと思います。けれども、対象は貨物だけではありません。技術も対象で、その技術にはプログラムも含まれます。


- ソフトウェアが「技術」として規制の対象になる理由
- ソフトウェアを「渡した」ことになる場面
- 渡す前に、何をどの順で確認すればよいか
経済産業省が公表した事例
経済産業省の「外為法違反事案の分析結果」には、会社名を伏せた違反事例が載っています。
2023年度版と2024年度版の両方に、次の事例があります(要旨)。
ソフトウェアの提供が、外為法の規制対象になりうるという認識がなかった。
分類は「外為法認識不足」です。
経済産業省は、この事例にこう解説を添えています。貨物の設計・製造・使用に必要な特定の情報は、ソフトウェアの形であっても規制技術に該当し、規制対象になりうる場合がある。
プログラムも「技術」に含まれます

なぜソフトウェアが対象になるのでしょうか。答えは、輸出管理での「技術」の決め方にあります。
役務通達という経済産業省の通達は、技術をこう定めています。
技術=「貨物の設計・製造・使用に必要な特定の情報」です。
そして、この情報は技術データや技術支援の形で渡されます。技術データの例には、設計図・仕様書・マニュアルと並んで、プログラムがはっきり挙がっています。
プログラム=「コンピューターなどが実行できる、ひと続きの命令」です。
たとえるなら、料理のレシピです。レシピは紙に書いても、動画にしても、中身は同じレシピです。技術も、紙の図面でもプログラムでも、中身が同じなら同じように扱われます。
役務通達は、許可が要る取引の対象を「外為令の別表に掲げる技術(プログラムを含む)」と書いています。
数字で見る「技術の提供」の違反
違反のうち、技術の提供にあたるものはどのくらいあるのでしょうか。
経済産業省の分析結果では、違反全体に占める技術の提供(役務の提供)の割合は次のとおりでした。
- 2022年度:26%
- 2023年度:12%
- 2024年度:16%
年によって差はありますが、違反の1〜2割台は、貨物ではなく技術の提供で起きています。
2022年度には、違反が多かった項目の1位が「暗号に関するソフト・技術」(全体の10%)でした。ソフトウェアがからむ違反は、けっして珍しいものではありません。
「渡した」ことになる場面

では、どんなときにソフトウェアを「渡した」ことになるのでしょうか。
役務通達は、提供をこう定めています。
提供=「他者が利用できる状態に置くこと」です。
手渡しでなくても、相手が使える状態にした時点で「提供」になりうる、ということです。
たとえば、次のような場面が考えられます。
- 海外の取引先に、プログラムのファイルをメールで送る
- 海外の拠点が、プログラムをダウンロードできるようにする
- プログラムを入れたUSBメモリなどを持って海外へ行く
どれも、中身が規制に該当する技術であれば、技術の提供として確認が必要になります。
ソフトウェアを使えるようにするサービス(SaaS)についても、役務通達は解釈を示しています。プログラムを相手が使える状態に置くことは提供にあたり、そのプログラムが規制に該当する技術なら許可の対象になります。ただし、条件を満たす一部のプログラムには、許可が要らないという規定もあります。
そして、メールやダウンロードによる技術の提供は、税関を通りません。 貨物なら通関で気づく機会がありますが、メール1通には、その機会がありません。社内の確認だけが関門です。
渡す前に確認すること

不安に感じたかもしれませんが、すべてのソフトウェアが規制されるわけではありません。確認の順番は、貨物と同じです。
① 何を渡すのかを特定する
(どの装置の、何のためのプログラムか)
↓
② 該非判定:規制に該当する技術か
↓
③ 相手を確認:海外にいるか、非居住者か
↓
④ 該当する場合:許可が要るかを確かめる
↓
⑤ 記録に残す
非居住者=「日本に住んでいない人や、外国にある会社」です。国籍ではなく、どこに住んでいるかで決まります。
ポイントは①です。「装置を売った」ことは管理していても、「一緒に渡したプログラム」は管理から漏れていることがあります。装置本体の該非判定をするときに、付いていくソフトウェアや、あとから送る更新ファイルも、確認の対象に入っているかを見てください。
まとめ
- プログラムも「技術」に含まれる。ソフトウェアの形でも、規制に該当すれば対象になる
- 技術=貨物の設計・製造・使用に必要な特定の情報。技術データの例にプログラムが明記されている
- 提供=他者が利用できる状態に置くこと。メール・ダウンロード・USBメモリなどでも起こりうる
- 違反の1〜2割台は技術の提供。2022年度は暗号に関するソフト・技術が項目別の1位
- メールやダウンロードでの提供は税関を通らない。社内の確認だけが関門
- 確認の順番は貨物と同じ。装置と一緒に渡すソフトウェアも対象に入れる
あなたの会社では、装置と一緒に渡しているプログラムを、誰が確認しているでしょうか?


※ 事例は、経済産業省「外為法違反事案の分析結果について(安全保障貿易関係)」の2023年度版(2024年12月公表)・2024年度版(2025年12月公表)に掲載された違反事例の要旨です。技術の提供の割合と項目別の順位は、2022年度版〜2024年度版によります。会社名は元の公表から伏せられており、この記事も特定の会社を示すものではありません。「技術」「プログラム」「提供」の定義は、役務通達(2026年2月14日施行版)によります。個別の取引が対象になるかは、法令・通達の原文をご確認のうえ、必要に応じて経済産業省にご相談ください。
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