概要
該非判定で「非該当」と出ても、それで輸出の確認が終わるわけではありません。用途と需要者の確認が、まだ残っています。
経済産業省は、非該当だったために用途と需要者を確認せずに輸出した事例を、違反事例として公表しています。
「非該当=規制の外だから、自由に出せる」と感じたことはありませんか?
そう感じるのは自然なことです。該非判定には手間がかかるので、そこを越えると、ひと仕事終えた気持ちになるからです。


- 経済産業省が公表した「用途・需要者確認の未実施」の事例
- 非該当の貨物にもかかる、もう1つの規制のしくみ
- 確認を飛ばさないために、社内で決めておきたいこと
公表された違反事例

経済産業省の「外為法違反事案の分析結果」2023年度版には、次の事例が載っています。会社名は公表されていないので、中身だけを紹介します。
- 該非判定を行った結果、非該当だった
- そのため、用途と需要者を確認することなく輸出した
経済産業省の解説は、次のとおりです。
- リスト規制に非該当であっても、キャッチオール規制について確認する必要がある
- そのため、用途と需要者を確認したうえで、許可申請の要否、輸出してよいかを判断する必要がある
なお、公表資料には、この事例で相手先や使いみちに具体的にどんな問題があったのかまでは書かれていません。ここでも推測で補うことはしません。
大事なのは、「確認をしなかったこと」そのものが違反事例として挙げられている、という点です。
非該当の貨物にもかかる規制があります
輸出管理の規制は、二段構えになっています。
- リスト規制=「リストに載った高い性能の貨物・技術を対象にする規制」です
- 補完的輸出規制(キャッチオール規制)=「リストに載っていない貨物でも、使いみちや相手しだいで対象になる規制」です
キャッチオール規制は、2025年10月9日の改正から「補完的輸出規制」と呼ばれています。事例の公表資料では「キャッチオール規制」と書かれていますが、同じものを指しています。
経済産業省の説明では、補完的輸出規制の対象は、リスト規制品以外で、食料や木材などを除くすべての貨物・技術です。
つまり、非該当の貨物のほとんどが、この規制の網の中にあります。
該非判定
├ 該当 → リスト規制の手続きへ
└ 非該当 → ★ここで終わりではない
↓
補完的輸出規制の確認
(仕向地・用途・需要者・インフォーム)
補完的輸出規制の2つの要件

補完的輸出規制で許可が必要になるのは、次の2つのどちらかに当てはまるときです。
① 客観要件
客観要件=「輸出者が自分で調べて、兵器に使われるおそれに気づいたら許可を取る、というルール」です。
調べる中身は2つあります。
- 用途の確認:何に使われるのか
- 需要者の確認:誰が使うのか
確認した結果、大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使われるおそれがあると分かったら、許可申請が必要になります。
② インフォーム要件
インフォーム要件=「経済産業大臣から『許可を申請しなさい』と文書で通知されたら、許可を取る、というルール」です。
客観要件は「確認すること」が前提です
ここで、事例の意味が見えてきます。
客観要件は、輸出者が用途と需要者を確認することを前提にしたしくみです。確認しなければ、「おそれ」に気づく機会そのものがありません。
たとえるなら、健康診断を受けなかったのに、「異常は見つかっていない」と言っているようなものです。見つかっていないのは、調べていないからかもしれません。
グループAの国向けはどうなるか
経済産業省の説明では、輸出令別表第3の地域(いわゆるグループA。米国・英国・ドイツなど27か国)向けは、客観要件の対象から外れています。
ただし、インフォーム要件は、懸念国などに迂回輸出されるおそれがある場合に限って適用されます。
また、この扱いは仕向地がグループAであることが前提です。仕向地を確かめること自体が、確認の最初の一歩になります。
確認を飛ばさないために

事例は、担当者が怠けていたというより、「非該当なら終わり」という手順になっていた可能性があります。手順の側で防ぐなら、次の3点です。
① 該非判定の結果欄の次に、取引審査の欄を置く
判定書や社内の審査票で、「非該当」と書いた欄のすぐ後に、仕向地・用途・需要者を書く欄を続けます。空欄のまま次へ進めない形にします。
② 「非該当」と「許可不要」を別の言葉として扱う
非該当は、リスト規制の答えです。許可不要かどうかは、補完的輸出規制まで確かめて初めて言えます。社内の言葉づかいで、2つを混ぜないようにします。
③ 判断した経緯を残す
経済産業省は、許可申請が不要と判断した場合も、判断に至った経緯を社内の規程に従って保存するよう求めています。参考様式の「客観要件確認シート」を使うこともできます。
確認の具体的な順番は、次の記事でフロー図に沿って整理しています。
- あわせて読む:客観要件の確認手順~フロー図に沿って1件ずつ潰す~
- あわせて読む:「リスト規制」と「補完的輸出規制」は何が違う?二段構えのしくみを図解
まとめ
- 非該当でも、用途と需要者の確認が残っている
- 経済産業省は、非該当だったので確認せずに輸出した事例を、違反事例として公表している(2023年度)
- 補完的輸出規制は、リスト規制品以外のほぼすべての貨物・技術が対象
- 客観要件は、確認することが前提のしくみ。確認しなければ「おそれ」に気づけない
- 社内では、「非該当」と「許可不要」を別の言葉として扱う
さて、あなたの会社の審査票では、「非該当」のあとに何を書く欄がありますか?


※ 事例は、経済産業省「外為法違反事案の分析結果について(安全保障貿易関係)」2023年度版(2024年12月公表)に掲載された違反事例の概要をもとにしています。補完的輸出規制の要件・対象範囲・グループAの扱いは、経済産業省「補完的輸出規制(キャッチオール規制)」のページによります。個別の取引で許可が必要かどうかは、経済産業省 安全保障貿易審査課にご相談ください。
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