概要

一度「非該当」と判定した製品でも、法令が改正されれば「該当」に変わることがあります。 判定結果は、判定したときの法令でしか通用しません。

「この製品は、前に判定して非該当だった。だから今回も大丈夫」。そう考えていませんか?

経済産業省が公表している違反事例に、この考えから起きたものがあります。

過去に非該当と判定した製品が、法令の改正で該当品になった。けれども改正を知らず、許可を取らないまま輸出を繰り返した。そういう事例です。

みなとくん船長、製品は何も変わっていないのに、該当になるんですか?
あんぼう船長変わったのは製品ではなく、ものさしのほうじゃ。そこを押さえておけば、防ぎ方も見えてくるぞ
## この記事で学べること
  • 製品が同じでも、改正で判定結果が変わる理由
  • 改正を1回見落とすと、違反が「繰り返し」になってしまう理由
  • 改正のたびに判定結果を見直す仕組みの作り方

経済産業省が公表した事例

経済産業省の「外為法違反事案の分析結果」には、会社名を伏せた違反事例が載っています。

2023年度版と2024年度版の両方に、次の事例があります(要旨)。

過去に非該当と判定した製品が、法令改正により該当品になった。しかし法令改正について認識がなく、無許可輸出を繰り返した。

分類は「法令改正への対応不足」です。

経済産業省は、この事例にこう解説を添えています。該非判定は、最新の外為法に基づいて行う必要がある。法令改正のときには、判定内容を確認すること。

変わるのは製品ではなく、ものさし

一度非該当なら、ずっと非該当?
一度非該当なら、ずっと非該当?

なぜ、製品が同じなのに結果が変わるのでしょうか。

該非判定は、製品の仕様を規制のリストに照らして行います。そのリストは、法令で決められています。

該非判定=「輸出する物が、規制のリストに載っているかを確かめる作業」です。

経済産業省のガイダンスは、リスト規制の品目は、原則として毎年改正が行われると書いています。

たとえるなら、ものさしの目盛りが引き直されるようなものです。製品の長さが同じでも、ものさしの線の位置が動けば、「線の内側か外側か」が変わります。

改正には、国際的な枠組みでの合意などに基づいて規制の対象を見直すものがあります。たとえば、2025年11月14日に公布され、主に2026年2月14日に施行された改正では、国際輸出管理レジーム(輸出管理の国際的な取り決め)での合意などに基づいて、規制対象の貨物が見直されました。

1回の見落としが「繰り返し」になる

改正を1回見落とすと、違反は出荷のたびに重なる
改正を1回見落とすと、違反は出荷のたびに重なる

この事例で見落とせないのは、「繰り返した」という部分です。

改正に気づかないと、社内では「非該当」の判定結果がそのまま生き続けます。いつもと同じ製品を、いつもと同じ手順で出荷する。その一回一回が、無許可の輸出になってしまいます。

改正の施行日
    ↓
社内の判定結果は「非該当」のまま
    ↓
1回目の出荷 → 無許可
2回目の出荷 → 無許可
3回目の出荷 → 無許可
    ↓
誰も気づかないまま続く

定番の製品ほど、出荷の回数が多いものです。いつも出している安心感が、かえって見直しの機会を遠ざけます。

判定結果を見直す仕組み

改正のたびに、判定結果の一覧を見直す
改正のたびに、判定結果の一覧を見直す

では、どうすれば防げるのでしょうか。カギは、判定結果を「日付つき」で管理することです。

ガイダンスは、一度判定したものは、法令の改正がない限り、原則として判定し直す必要はないとしています。裏返せば、改正があったら見直しが必要ということです。ガイダンスも、判定結果と根拠を一覧表にまとめ、法令改正のときには見直すことを勧めています。

具体的には、次のように回します。

① 判定結果の一覧に「判定日」と「使った法令の版」を書く
      ↓
② 改正の公布を知る
      ↓
③ 改正で変わった項目に関係する製品を、一覧から拾い出す
      ↓
④ 施行日までに判定し直す
      ↓
⑤ 結果が変わった製品は、許可の手続きを確かめる

公布日と施行日は別の日です。公布=「新しい法令が世の中に知らされる日」、施行=「その法令が実際に効き始める日」です。この間に見直しを終えるのが目安になります。

改正を知るための道も、決めておきましょう。

  • 経済産業省の安全保障貿易管理のホームページにある改正情報を、定期的に確認する
  • 担当者を決めて、改正の確認を「誰かがやるだろう」にしない
  • CP(輸出管理内部規程)を経済産業省に届け出ている会社には、制度改正などのメールが届く仕組みもある

あなたの会社の判定結果の一覧には、「いつの法令で判定したか」が書かれているでしょうか?

まとめ

  • 一度非該当と判定した製品でも、改正で該当に変わることがある
  • 変わるのは製品ではなく、規制のリスト(ものさし)。リスト規制の品目は原則として毎年改正される
  • 改正を見落とすと、出荷のたびに無許可の輸出が重なる
  • 判定結果は判定日と法令の版をつけて一覧で管理する
  • 改正のたびに関係する製品を拾い出し、施行日までに見直す
  • 改正を知る道(改正情報の確認・担当者・届出企業へのメール)を決めておく

さて、あなたの会社で、前回の改正のあとに見直した判定結果は、何件あったでしょうか?

みなとくん船長、判定書って、作ったら終わりだと思っていました
あんぼう船長判定書にも、使える期限があるようなものじゃ。改正のたびに見直す習慣がつけば、この型はふさげるでな
- あわせて読む:[改正の「施行前」に許可申請する方法~NACCSで省令番号「0-0」を使う~](/articles/license-application-before-effective-date) — 改正で該当になる品の許可を、施行前から申請する方法 - あわせて読む:[輸出管理は「法律・政令・省令・通達」の4階建て](/articles/four-layers-of-law) — 改正がどの階で起きるのかをつかむ

※ 事例は、経済産業省「外為法違反事案の分析結果について(安全保障貿易関係)」の2023年度版(2024年12月公表)・2024年度版(2025年12月公表)に掲載された違反事例の要旨です。会社名は元の公表から伏せられており、この記事も特定の会社を示すものではありません。改正の頻度と判定結果の扱いは、経済産業省「安全保障貿易管理ガイダンス[入門編]」(第3.0版・令和8年3月)によります。改正の例は、経済産業省「輸出貿易管理令等の改正の概要について」(令和7年11月)によります。最新の改正は、経済産業省 安全保障貿易管理のホームページでご確認ください。

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